──人間なんてちっぽけな存在、人間同士が醜く争うなんて馬鹿馬鹿しいと思わないかな?──
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(※本館「Blast Burn!」の小説をご覧になっている方推奨です)
腕の掠り傷の処置をしながらフィオラが言う。治療されている本人は視線を逸らして窓の外を眺めていた。
「このぐらい、どうってコトはない」
「あなたのコトじゃないわ、ショウタ君よ」
ほら腕を上げて、と前足を器用に使ってリーフの腕に包帯を巻いていくフィオラ。二巻きしたところで手を止め、リーフの横顔を見上げる。相変わらず視線は此方に向かない。
「何もリーフストームまでしなくても……その前に戦えなくなってたんでしょう?」
「……油断は禁物だからな」
「嘘言って、怪我の具合を見ればどれだけダメージを負っていたのかぐらい分かるのよ」
それ以上は何も答えそうにない。フィオラはそんな彼の態度にムスッとしながらもキチンと自分の仕事を仕上げていった。
「はい、これでおしまい」
どうせまた怪我してくるんでしょうけどね、と皮肉っぽく言うのはいつものこと。ポケモンにバトルはつきもの。今更止めることではない。フィオラたち診療所のポケモンは、そんなバトルで傷を負ったポケモンたちを治療するのが仕事だ。
「あ、ちょっと」
軽く礼を言って椅子から立ち上がったリーフを呼び止める。彼は背中を見せたまま視線だけを此方にやった。
「あなただってBTの一員だし、レギュラーを目指すのは悪いコトじゃない、その点では応援するわ。……けど」
「……何か?」
「仲間の信頼を失うようなコトだけはやめなさい、これ以上やり過ぎないコト」
あぁ、と気持ちの篭らない返事をすると彼は部屋から出て行った。
(もういい加減終わった頃だろ)
それよりも気になるのはもう一つの試合の方だった。上の空で扉を開けると、戻って来たばかりのミズホと出くわした。キョトンとして此方を見上げている。
「リーフさん、もう処置は終わって……?」
「掠り傷だからな」
何でもない、という風に答えてみせる。
「……そうだ、もう一つの試合はどうなった? 見に行っていたんだろう?」
「えぇ」
ミズホは軽く頷いて答える。「ホーンさんが勝ちましたよ」
一瞬リーフの視線がきつくなる。しかし臆することなくマイペースに彼女は続ける。
「今ユウリさんが応急処置をしてて……大変そうだからフィオラさんを呼びに」
「………」
リーフは答えない。視線を逸らして考えるような仕草をしている。
「あの……」
「……ん」
「それじゃ私、急いでるので」
そのまま挨拶もなく二人はすれ違った。背後で駆けていくミズホの足音。リーフは一歩、二歩と歩き出し、まだ日の高い青い空を見上げた。
メブキを巡る復讐劇、それは先の戦いで達成された。自分の中でもやり遂げたという実感はある。それなのに心は満たされない。自分の心の異変に彼は気づいた。
(……スッキリしないな、ったく)
彼の中で、先程までとは違う、別の何かが燻り始めていた。
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プロフィール
HN:
餅 雅李音(ガーリィ)
年齢:
35
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性別:
男性
誕生日:
1989/06/07
職業:
大学院生
趣味:
ポケモン、恐竜、将棋、麻雀、 絵描き、小説書き (※創作全般に興味あり)
自己紹介:
ひたすら Going my way な道産子で関東圏の古生物専攻大学院生。
日本で数少ない地学系統に入る為に1年を平気で棒に振るようなお馬鹿さん。
将来の夢は古生物学者兼小説家。
平凡な人生を嫌う、My pace な駄犬。最近ドラゴン。
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